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省サイズのマルチソフトで視覚障害者でもモバイルが可能に

イージーパッドは、すまいるの門川紳一郎理事 長(右)たちの要望にこたえて山西賢二氏(左) が開発した。 価格は7000円。問い合わせはすまいるまで。 ブラウザーモードではインターネットは文字だけで表示され、検索機能も使える。障害に合わせて音声読み上げや写真のように点字ディスプレイをつなぐなど省サイズながら機能は充実している。

「既存のソフトは機能がたくさんあるけれど、我々が使いこなせるようになるのは大変なんです」と語るのは、NPO法人「視聴覚二重障害者福祉センターすまいる」の門川紳一郎理事長。すまいるでは生活支援の1つとしてパソコン指導を行っているが、目と耳の両方に障害のある人もいて、操作を覚えるのは非常に困難となる。門川理事長自身も視聴覚二重障害者で触手話 による通訳が必要なため、パソコンの習得には苫労を重ねてきた。特に、市販されたりパソコンに付属したりしているソフトは、高機能だが操作も複雑になってきているものが多い。

また、メーラーとブラウザは別々のソフトを使わなければならないといったことにも強い不満を持っていた。そんな声にこたえて「イージーパッド」が開発された。

メール、インターネットブラウザー、文書作成という3つの機能を1つにしたソフトで、少ないキー操作でメールの送受信やウィンドウズの終了なども簡単にできるようになっている。

たとえば、メールモードでは作った文章の冒頭が自動的に件名として採用されるので、入力する手間が省ける。

また、弱視者や全盲者など障害のレベルに合わせて使えるような機能も搭載されている。文字の拡大や画面背景色の切り替えもワンタッチでできるし、漢字からひらがなに変換し音声で読み上げるといったこともできる。

点字利用者向けとして、ピンディスプレーをつなげての点字表示や6点点字入力に対応。さらに点字学習ゲームも付属 している。

ソフトを開発したのは奈良県でパソコン教室「やむ」を運営する山西賢二氏。 開発前は、すまいるのメンバーらが不満としている、よく使う操作をキー登録して簡略したり、文字を拡大したりする機 能は、最近のOSやソフトには標準で搭載されているので不要ではないかと考えていた。

しかし、それらは健常者を前提としており、キー登録をするために覚えなくてはいけないことが多かったりと、障害がある人にとってはやはり使いにくいものであることがわかった。

そこで、すまいるからの要望を取り入 れながら、一からソフトの開発に取り組みはじめた。 一番苫労したのは、どの機能を搭載するかだった。というのも、イージーパッドには大きな課題があったからだ。 「操作性もさることながら、最もこだわったのはソフト全体の容量でした。それというのも障害者は旅好きの方が多く、できれば出先や旅先でインターネットを楽しみたいという要望が強かったからです」(山西氏)

イージーパッドは約450KBとフロッ ピーディスクに入るサイズになっているのでフロッピーに余裕があり、送受信したメールや文書なども一緒に保存できる。また、インストールは不要なのでフロッピーディスクドライブが付いているパソコンであればすぐに使える。

「インターネットカフェなどでも使える ので、パソコンを持ち歩かなくてもいいんです。フロッピーのまま使えるのですから、パソコンが苦手な入でも大丈夫。我々が使って便利なんですから、普通の 人にとっても便利だと思います」門川理事長の言う通り、大阪で7月に開催されたイージーパッドのお披露目会には、パソコン初心者や高齢者らの姿が多く見られた。また、初めて使う人も 15分ほどの説明で、だいたいの操作を 覚えることができていたようだ。

山西氏は「今後も機能性と操作性のバランスを見据えつつ、チャットや映像メールなど、利用者が求める機能を追加していきたい」と抱負を語る。