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掲載記事

朝日新聞 2004.3

タッチ券売機

「使いにくい」 障害者に不評

点字 凹凸少なく 目や耳の不自由な人たちが、駅のタッチパネル式自動券売機に困っている。ボタン式の券売機と違って画面に凹凸や点字がないため、切符を買うのが難しいためだ。

鉄道会社は、タッチパネル式を次代の主流にする方針だが、障害者たちは「私たちへの配慮を忘れないで」と訴えている。 JR大阪中央コンコース南の切符売り場。視覚障害者のための点字誘導ブロックに従って歩くと、5台のタッチパネル式券売機に突き当たる。 目が不自由な人は、券売機に張ってある点字シートを手探りしたり、運賃ボタンの位置を覚えておいたりして切符を買うケースが多い。

全盲の安達祐美子さん(33)大阪府高槻市は「私たちをわざわざなぜタッチパネルに誘導するのか」と首をかしげる。 大阪駅には、6カ所の切符売り場に計67台の券売機がある。うち、タッチパネルは23台。6ヶ所の売り場のうち、誘導ブロックの先にボタン式があるのは2ヶ所だけだ。 誘導先に設置 JR西日本営業所によると、同社のタッチパネル式は旧式と、昨年2月から導入した新型の2種類がある。新型は数字キーがついており、金額を入力すると案内音声が流れ、切符を買うことができる。このため新型に限り、誘導ブロックの先に設置することを認めている。ただ、使い方を説明する点字シールは新型にも付いていない。目と耳が両方不自由な人にとっては、案内音声はあまり役に立たない。

JR営業本部の担当者は、「誘導ブロックの先をすべてタッチパネルにした売り場は、配慮が不足していた。配置換えを検討する。」と話す。 同社管内に券売機は約2千台あり、タッチパネル式は450台(うち新型180台)とまだ少ない。だが特急券やICカードも販売できるなど多機能を1台に盛り込める利点があり、いずれはボタン式を上回る見通しだ。担当者は「障害のある人たちにも、新型の使い方に慣れていただければ」と言う。

「意見を聞いて」 一方、JR東海が運行している東海道新幹線の17駅の券売機は、265台中260台がタッチパネル式になった。京都駅にはボタン式は1台もない。色弱の人のために画面表示の文字を白黒表示する機能が180台にあるものの、点字シールは付いておらず数字キーでの購入もできない。 JR西日本が広島、岡山など地方の主要駅に増やしている「みどりの券売機」もほぼ同様だ。JRは「座席位置や乗り場などを説明する必要があり、障害のある方には、窓口での購入をお願いしたい」と説明する。

だが、盲ろう者の門川紳一郎さん(38)大阪市は「私たち他人とのコミュニケーションが難しく、機械のほうがかえって便利な場合がある。鉄道会社は、もっと障害者の意見を聞いてほしい。」話している。

(朝日新聞2004年3月14日朝刊より)