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掲載記事

COMVO 2005.12 Vol'93

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盲ろう者とのコミュニケーション方法

「手と手で語る「触手話」で盲ろう者と社会をつなぐお手伝い」

視力と聴力の両方に障害のある人のことを「盲ろう者」と言います。

『まったく見えない聞こえない人』から『少しは見える聞こえるという人』まで障害の程度はさまざまですが、共通しているのは「移動」と「情報の入手」が困難なこと。そのため、盲ろう者には、手引きだけでなく、人とのコミュニケーションを手伝ってくれる通訳者が不可欠です。

盲ろう者とのコミュニケーションには触手話・指点字・手書き文字など、いくつかの方法があります。

視力と聴力のどちらも先に失ったのかということや、障害の程度によって使われる方法が異なり、人によっては、いくつかの方法を組み合わせることもあります。

そのなかで触手話は、初めは聴覚障害者で手話を使っていた人が、のちに視覚障害を伴った場合によく使われる方法。基本的には手話と同じで、盲ろう者は通訳者の手に触れて、手話を読み取ります。

「視聴覚二重障害者福祉センターすまいる」理事長の門川紳一郎さんも、4歳の時に病気で視力と聴力を失い、主に触手話と指点字でコミュニケーションをとっています。すまいるで触手話の通訳者として活躍しているのは、自身も聴覚障害者の石塚由美子さん。門川さんの手の下では石塚さんの手が機敏に動き、驚くほどのスピードで会話が伝えられます。

その二人が口をそろえるのが、「講座で触手話を勉強してから、と言う人が多いけれど、むしろ盲ろう者と付き合うなかで覚えて欲しい」ということ。何よりも「やろうという意欲が大切」と門川さんは言います。

手話ができる人なら、あとは実践あるのみといえるかもしれません。手話と触手話の違いは、前者が表情も交えて情報を伝えるのに対して、後者では手だけがコミュニケーションの手段だという点。例えば、聴覚障害者には首を立てに振れば「はい」という意志が伝わりますが、盲ろう者には見えないので手に指で丸を描くなどの工夫が必要となります。

また、触手話の通訳者は会話だけでなく、周りの状況を伝えることも大切です。街の様子や道端に咲く花のこと、空の色、今いる部屋の様子、誰が話しているのか、どんな特徴を持つ人なのか・・・。そしてもう一つ、簡単そうで意外に難しいのが、通訳者は自分の考えを交えずに、見たこと聞いたことをありのまま伝えなければならないということ。「その情報が必要かどうかの判断は、盲ろう自身がすることですから。」石塚さんはきっぱりそう言います。

現在すまいるに集う盲ろう者は12人前後。「盲ろう者の多くは、情報を絶たれたままに閉じこもっています。同じ障害をもつ人がいることすら知らない人もいるはず。かつて私自身がそうでしたから。そんな人たちにぜひ、すまいるに来てもらいたい。」ここを拠点に盲ろう者の社会参加のきっかけづくりをすすめていくことが、門川さん達の目標です。

そのためにも、もっとたくさんの人の手が求められています。触手話ができなくても、手のひらに指で文字を書く手書き文字なら大半の盲ろう者が理解します。まずは話しかけてみませんか。肩や腕を軽くトントンとたたいて盲ろう者があなたに気づいたら、相手の手に触れて名前を伝えましょう。

さぁ、コミュニケーションのはじまりです。

(COMVO記事より)