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掲載記事

DbI Review 50号(2013年1月)
「皆さんのお話を傾聴します!」


1999年、日本の大阪に当事者の手により、盲ろう者サービスセンター「すまいる」が設立されました。すまいるの創設者は、盲ろう者が積極的な人生を送り、日本の社会で平等なメンバーの一員として受け入れられるように、様々なサービスを開発してきました。

多くの国と同じく、日々、毎分、盲ろう者は数えきれない困難に直面しています。日本における多くの問題の中でも、社会的健康は最も優先されるべき事項です。盲ろう者の多数は孤立、そして周囲からの大きな誤解を経験しています。この困難に追い打ちをかけるように、資源やサービスへのアクセスは非常に限られています。娯楽や余暇の機会の選択肢もほとんどありません。そのため、盲ろう者のストレスの度合いは高まり、彼らの体は悲鳴をあげています。極端な事例では命を落とした盲ろう者までいます。

日本の盲ろうの分野のリーダーは働き過ぎたり、自分のいる集団や盲ろう者の権利擁護活動で深刻なストレスを抱え込んだりしています。

世界有数の研究型の製薬企業であるファイザー製薬の助成に申請し、その助成を受け、「すまいる」はこの問題に初の一歩を踏み出しました。このプロジェクトには4つの大きな目標を設定しました。
1)盲ろう者の健康問題とストレスについて調査を行う
2)ピアカウンセリング
3)調査の分析
4)ネットワーク作り

この調査を通して、盲ろう者が大きなストレスにさらされていることに力を入れて啓発に取り組みました。このプロジェクトの活動の一環にピアカウンセリングがあります。このカウンセリングを通じ、盲ろうの回答者と信頼関係を築きました。その結果、さらなる能力構築を組織し、自分の障害に対する理解を高め、盲ろう者の周囲で暮らしている人たちに、より良い意識啓発をするためのネットワーク作りに成功することができました。

このプロジェクトには48人の盲ろう者が参加し、アンケート調査に回答しました。これは日本で特定されている盲ろう者(200人)の約1/4にあたります。日本に在住している盲ろう者はさらに多くいることを考えたとしても、これはサンプル母集団としては、非常に大きな割合です。

48人の回答者(男性24人・女性24人)の年齢は20代から70代までです。コミュニケーション方法は点字(5人)、手話(25人)、筆記(1人)、音声(17人)と、日本の盲ろう者の代表的なコミュニケーション能力を示しています。できる限り、盲ろう者の個人的な人生を描き出すために、カウンセリングを含めた聞き取り調査は2~3時間に及びました。

「家族とさえもコミュニケーションが取れない盲ろう者もたくさんいます」

<今回の主な結果>
●視聴覚の障害のため、余暇活動や趣味をあきらめた盲ろう者が多くいる。
●質の高い生活を送る盲ろう者とそうでない盲ろう者の間には大きなひらきがある。
●自分の家族とさえコミュニケーションが取れない盲ろう者が多くいる。たとえ、コミュニケーションがあったとしても、「食事ができた」「お風呂の時間」などの用件に限られる。
●あんま・鍼・灸(伝統的な中国の療法)の資格を有する盲ろう者も数人いる。しかしながら、就職先がほとんどないため、現在、この資格を活用できていない。雇用されていたとしても、患者や同僚とのコミュニケーションに苦労し、仕事をあきらめざるを得ない。
●自分の置かれている状況を悲観し、全盲ろうになったら、施設に行かざるを得ないと考えている盲ろう者が多くいる。ある回答者は「残存視力を失ったら、夫と離婚し、家族の元を離れ、施設に行くつもりである。」と答えた。

これらの調査結果は非常に憂慮すべきものである一方で、このような状況にある盲ろう者の生活の質を向上し、自立を確保するために何ができるかを学ぶ大きな課題を得ることができました。ネットワーク作りや能力構築など、複数の方法でこれらの問題への対応を継続しています。

<ネットワーク作り>

趣味を持ったり、娯楽や余暇活動に参加したりするのが難しいと言う盲ろう者がいます。ネットワーク作りを通し、趣味を持ったり、娯楽を楽しんだりするための考えや意見を出し合うことができました。経験と実践を取り交わすために、「すまいる」外部ともこのネットワークを継続していく予定です。

<能力構築>

盲ろうになると、より消極的になり、以前していたことをあきらめたくなる傾向にあります。盲ろうは深刻な障害であり、活動を続けるためにはより多くの時間、労力、金銭を強いられることは事実です。この能力構築を通じ、自分たちがしたいことはなんでもできるという理解を高めようとしています。つまり、自己意識を高めるということです。社会において、盲ろうという障害のより良い理解を生み出し、アクセシビリティを向上させることによってのみ、能力構築は可能となるのです。

さらに改善が必要なのは、盲ろうの分野でより良いアクセシビリティと一般社会の意識啓発です。日本でこれを改善させるために、「すまいる」では諸国の経験から学ぶ必要を感じています。読者の皆さんの国における情報や良い実践例からの助言をお待ちしています。皆さんからのご連絡をお待ちしています。メールしてくださいね!皆さんの意見や提案は盲ろう者を支援する次の段階への助けとなるでしょう。盲ろうであるために命を失う人をみたくはないはずです。この困難な問題に共に取り組みましょう。

このプロジェクトについて、2012年11月、世界最大規模の「ビッグイシュー」のインタビューを受けたことは大きな喜びです。ヘレン・ケラーのことを知らなくても、皆さんのご近所にいる盲ろう者のことは知っている、という日が来ることを楽しみにしています。