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盲ろう者に自立の場 天王寺区に専用グループホーム

大阪日日新聞 2017年4月7日(金)掲載

視覚と聴覚の両方に障害がある盲ろう者専用のグループホームが、日本で初めて大阪市天王寺区に開設された。施設内は、各階ごとに床やドアが色分けされるなどの工夫が施され、通訳介助者が24時間体制でサポート。仲間とともに起き、食事をとり、語らう生活の中で入居者は自立への道を進む。

運営主体はNPO法人「視聴覚二重障害者福祉センターすまいる」(門川紳一郎理事長)。

グループホームは、利用者が就労や憩い集う事務所から徒歩2分の場所にある。



増えた笑顔

元は立体駐車場だった土地に5階建てを新築。総工費は1億4千万円で、寄付や街頭募金などを充てた。

1階はキッチンと食堂、和室。2~4階が居室(7・58~8・05平方メートル)になる。各階の床とドアは弱視者のためにオレンジや黄緑に塗装され、室内には来訪者など外部からの合図に、振動する機器を常備。トイレには手で触れることができる位置に男女のマークが大きく立体表示され、「かつて見えてた人は『懐かしい』、見えていなかった人は『こんなマークだったんだ』と喜んでいる」と、法人事務局長の石塚由美子さん(58)は笑う。

3月から入居が始まり、全10室中8室が埋まっている。石塚さんよると、入居者に「笑顔が増えた」とか。「実家だと、両親の様子が気になるし、子ども扱いされる。ここでは、介助者を通じて思う存分、意見が言えるからでしょう」と話す。



当たり前に

グループホームは12年越しの夢だった。

「みんなで一緒に暮らせたらいいなあ」。自身も盲ろう者である門川理事長がすまいるを設立したのが、1999年。活動を続ける中で、利用者から「自立できる場」としてグループホーム建設の声が上がるようになった。親も年を取り、将来への不安も切実だった。

資金集めと並行して土地探しも行ったが、直面したのが建設予定地周辺の住民との調整。グループホームは、事務所から近いとはいえ、JR・地下鉄「鶴橋駅」から徒歩5分と、人も車も往来が多いエリアだ。

事故を心配する声に、外出時には介助者と共に行動することで理解を得た。

「盲ろう者が当たり前に暮らし、みんなと同じ人間だということを見てほしいし、温かく見守ってほしい。全ての人が同じように暮らすことができる温かい町になれば」と石塚さんは願う。