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盲ろう者向けグループホーム ミッキーハウス 開所から4カ月 大阪

日本聴力障害新聞 2017年8月1日(火)掲載

利用者の願いをもとに暮らしをつくる


NPO法人 視聴覚二重障害者福祉センターすまいる(門川紳一郎理事長)が運営する、日本初の盲ろう者向けグループホーム「すまいるレジデンス for the Deafblind(愛称、ミッキーハウス。定員10人)が4月に開所して早4カ月。その様子を取材してきました。


盲ろう者自身にとって暮らしやすい場に

5階建てのグループホームは駐車場だった大阪市の土地を借り、総工費1億4千万円をかけて新築しました。24時間、スタッフ10人が交代して常駐し、家事をはじめとした日常生活ができるようサポートします。全10室の完全個室(7・58~8・05㎡)。朝昼晩の食事付(実費)です。7月6日現在、20代~60代までの7人が入居しており、2人が入居申請中です。入居者7人のうち6人が点字もわかります。

ホームでは、弱視者が色のコントラストで各階を識別できるよう床やドアの色をオレンジや黄緑にしたり、男女のトイレが手で触れてわかるよう男女のマークを立体的に表示する等、盲ろう者が自分で情報を得られるよう環境の整備に工夫が施されています。

入居者は日中、グループホームから徒歩3分の場所にある同法人の就労継続支援B型事業所に通って、自主製品の制作、パソコン・料理。お花といった生涯学習、和太鼓クラブなどに取り組んでいます。利用者の親たちは自分の亡き後の我が子の将来を心配していましたが、この開所で自立支援給付できるようになり、安堵しています。


自らの要望が出せ、自立支援給付につなげる支援を

すまいるの事務局長で、自身ろう者の石塚由美子さんは、盲ろう者が自ら要望を訴えて自立できるよう、背中を押すようにして支援します。時には仲間同士が点字を教え合う様子にもあえて手を出さず、優しく見守ります。石塚さんはこの支援を縄跳びに例えます。「いきなり縄跳びに入ろうとすると、タイミングが合わなくて縄が身体に絡むことがありますね。でも、リズムを知ることで、縄跳びに加われるでしょう。そのリズムがつかめるよう助けをしているんです」。

石塚さんは、グループホーム開所後、環境の整備については利用者の声を聞いて初めて分かったこともあるといいます。例えば、照明のスイッチはオンオフ1つになったものではなく、オンとオフを分けたスイッチの方が電灯がついているかどうかがわかりやすいこと、どこに手すりを付けたらよいかは利用者によって、さまざまなので相談して決めた方がよいことなど。また共用部分の手すりなどは全員の相談で決めるようにしています。


盲ろう者の実態に即した制度の改善を

さらに、盲ろう者がヘルパーを利用する場合、触手話等による食べ物の状況説明等から、定められた利用時間内に食事が終わらないため、盲ろう者の実態に即した制度に改善する必要があると訴えます。

盲ろう者は全国で1万4000人はいるとされていますが、ホームの定員は10人のみです。石塚さんは「すまいるの実践をモデルにして、全国各地に盲ろう者の施設が広がってほしいですね。そしてグループホームとともに生活介護施設等にも、受け入れ条件を整え、盲ろう者が身近なところで安心してサービスが利用できるようになってほしい」ということを強く願っています。また、石塚さんは「盲ろう者にとって優しい街は全ての人にとって優しい街になると思うんです」とも語りました。




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