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Human Interview 障害のある人と共に生きる②

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門川 紳一郎さん
NPO法人視聴覚二重障害者福祉センターすまいる代表。生まれつきの視覚障害、はしかによる高熱が原因で4歳より聴力を失い、盲ろうの状態になった。大学卒業後、ミスタードーナツ障害者リーダー海外派遣事業の第8期研修生として渡米、ニューヨークの大学・大学院で学び修士課程修了。帰国後から今まで、継続して盲ろう者の支援の活動に携わっている。

「支えてくれる人がいるから生きていける」
 視覚と聴覚の両方に障害のある、盲ろう者の活動拠点「すまいる」。余暇を含めた毎日の生活支援は、全国でも例のない取組です。今回は、代表の門川紳一郎さんに、障害のことや、盲ろう者の生活・生き方などについて、お話を伺いました。
 このインタビューでは、門川さんへの質問を指点字(盲ろう者の指を点字タイプライターのキーに見立てて指先をたたく)で伝え、質問に答えてもらいます。門川さんからの発言は通訳者が門川さんの声を同時に読み取り、復唱し、確認しながら進めていきました。

見えなくて聞こえない盲ろう者がいます
 盲ろう者は、他の障害のある人に比べあまり知られていません。目が見えない、耳が聞こえない人といって思いだすのは、ヘレンケラーですね。盲ろう者の中にも、聴覚障害で自分の声を確認できず、話すことも難しい三重苦の方は、少なくありません。ただ、全く見えない、聞こえない人はごくわずか。全盲から弱視、全ろうから難聴まで幅が広く、盲ろうと一口にいっても、その人によって、見え方、聞こえ方が違います。
 僕は物心ついた頃にすでに視覚に障害があったと聞いています。今はかなり視力が落ちて、一人で移動するのもちょっと怖いぐらいです。耳のほうは4歳の頃にはしかにかかって気がついたら聴覚が落ちていました。今は非常に見えにくく、まったく聞こえない状態です。
 「見る」「聞く」が難しい分、触角や嗅覚をフル活用して生活しているので、匂いや肌触り、味覚が敏感です。僕をはじめ、多くの盲ろう者は、旅先で美味しいものを食べたり、温泉に入るのが大好きです。ただ、ふらっと放浪の旅に出たくても、ガイドヘルパーなしで行けないのは残念です。
 盲ろう者が最も困るのは、情報の入手とコミュニケーションです。新聞や雑誌が読めない、ラジオを聞くこともできない。情報過多といわれる時代にあって、盲ろう者は情報に飢えているのです。最近は、パソコンでインターネット上の情報を入手でき、便利になりました。画面の文字情報を点字に変換し、それを「点字ピンディスプレイ」に表示させて読み取っています。
 人とコミュニケーションをとるときの手段は、障害の程度や障害を受けた時期によって異なります。一般的に、視覚障害が先の場合は点字を覚えている場合が多く、指点字などを使います。一方、聴覚障害が先の場合は手話ができる場合が多いので、手で触って読み取る触手話、多少見える場合は、接近手話などを使います。このほか、手書き文字(手の平などに指先で文字を書く)などでコミュニケーションをとる場合もあります。

生きているのだから楽しみがほしい
 「すまいる」の取組の一つに盲ろう者の楽しみや生きがいを作ることがあります。盲ろう者は、仕事がしたくても働く場はまずありません。飲んで、食べて、寝るだけの生活をしていると、体を壊してしまいます。
 しかし、「すまいる」に来たら、おしゃべりしたり、ごはんをつくって食べたり、すいか割りやオセロ大会などの楽しみに参加できます。入会する前より皆、格段と明るくなります。「すまいる」は、会員約100名、このうち、30人ぐらいが毎日やってきます。会員が日常的に集まって活動する場所は全国でも珍しいようです。
 「すまいる」では、みんなのやりたいことをきいてできるだけ方法を一緒に考えます。和太鼓もそのひとつ。盲ろう者は、太鼓の音が聞こえません。そこで、盲ろう者と盲ろう者でない人がペアになり、盲ろう者が叩くときは、そのリズムに合わせて、盲ろう者の背中を盲ろうでない人が叩いて伝えます。リズムが合わず大変ですが、工夫して、みんなで一つの音をつくっていく。その過程が楽しいのです。

みなさんの手助けが必要です
 見えなくて聞こえない、だから生きていくためには、皆さんの手助けが必要です。そうすることによって自立した生活ができるようになればいいんだと思います。情報入手や外出時に、私たちの目や耳になってくれる人がいたら、自立生活がおくれます。
 町の中でみかけたら声をかけて下さい。盲ろう者のなかには、一人で移動する人もいます。目的地へたどりつけず、イライラしていることも多いです。そんなところを見かけたら、まず声をかけ手の平に文字を書きながら話をして、ガイドをしてもらえれば助かります。
 盲ろう者をはじめ、多くの人たちに私たち「すまいる」の活動を伝えてほしい。ぜひ、事務所へ遊びにきてください。ちょっと顔を出してくれるだけでもかまいません。秋にイベントをやるので見に来て、感想を、ブログで紹介したりすまいるのホームページにお寄せくださると嬉しいですね。

 

この方にもお話しを聞きました
事務局長 石塚 由美子さん
 3歳のときにろうとなる。大学卒業後、重度障害者施設で指導員として勤務。現在は、自身が障害を持ちながら、そのろうの障害をいかし「すまいる」で事務局長として盲ろう者の活動を支援。

私も、人の役に立てた!
 15年前。ボランティア活動先で初めて盲ろう者と出会いました。耳が聞こえる人同士の会話に入れず孤立しているその姿に自分をみているような気がしました。なぜなら私も耳が不自由で、同じようなさみしさをずっと抱えていたからです。盲ろう者へのサポートは「人の役に立てた」初めての経験。ろう者は、助けられるだけだと思っていた自分の考えを改めてくれました。活動をすればするほど、一見「支援する人、される人」という立場が実はお互い対等であるということを教えられます。

*第5回盲ろう者ビッグステージinOSAKA2010を開催。2010年11月13日(土)門真市民文化会館大ホール。盲ろう者が主人公のほか、和太鼓、ダンスなど楽しさいっぱい。
協力券:前売りおとな3000円(当日券3500円)。詳しくはNPO法人視聴覚二重障害者福祉センターすまいるまで(TEL:06-6774-3347 FAX:06-6774-3337)
URL:http://www.deafblind-smile.org