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暗闇と無音の道支えて
盲ろうの門川さん体験を映画に

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暗闇と静寂の中で、何を感じ、何を思うのか―。目と耳が不自由な「盲ろう者」を主人公にした自主製作映画が完成し、13日に門真市内で上映される。製作したのは盲ろうの門川紳一郎さん(45)=大阪市北区。青年時代の体験をもとに脚本を書いた。「この映画で盲ろう者のことを知り、支えてくれる人が増えるきっかけになれば」と話している。(滝沢卓)

 映画の冒頭、主人公の盲ろう者「けんた」は20年前を回想する。孤立気味の大学生だったけんたは偶然、女子学生の「えりか」と出会う。えりかは移動に付き添ってくれたり、点字を覚えてくれたが、その分授業やサークルを休みがちに。えりかの友人から「お前が負担になっている」と言われ、大学での生活の難しさを実感したけんたは、盲ろう者支援が充実している米国に留学しようか思い悩む―というあらすじだ。
 タイトルは「道ゆかば」。盲ろう者が人生という「道」を歩んで行くには周りの理解とサポートが必要、という思いを込めた。けんたは盲ろう者の中本謙次さん(57)=堺市西区=と、聴覚障害者の吉本佑さん(24)=藤井寺市=が演じた
 けんたのモデルは門川さんだ。大学に入学して2年間は、周囲の人たちとのあいさつくらいしか会話ができず、孤立感にさいなまれたという。1年生の夏には、思いが伝わらないつらさから、陸上競技サークルの合宿の途中で帰宅したこともあった。一方で門川さんの手のひらに字を書いて会話したり、点字を覚えたりして友人になった人もいた。
 門川さんは大学卒業後、米国や留学し、盲ろう者への支援について学んだ。帰国後、1999年にNPO法人「視聴覚二重障害者福祉センターすまいる」(大阪市天王寺区)を設立。理事長に就任し、盲ろう者のためのパソコンや手話などの教室を開いている。映画は設立10周年を記念して製作した。
 門川さんは「私たちは見えない、聞こえないだけ。周囲が工夫してくれれば、みんなと話すことが出来る」と訴え、「映画でコミュニケーションの仕方や悩みを知り、困っている盲ろう者を見かけたら助けてあげてほしい」と呼びかけている。

あす門真で上映
 上映は13日午後1時半から、門真市末広町のルミエールホールで。同ホールでは当日、「盲ろう者のビッグステージinOSAKA2010」が開かれており、盲ろう者が和太鼓やダンスを披露する。入場料(前売り)は高校生以上3千円、小中学生1500円。問い合わせは「すまいる」(06・6774・3347)へ。

写真:手話をする手を触って理解する「触手話」で取材に答えてくれた門川さん(左)。画面は映画の一場面=大阪市天王寺区上之宮町