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スピーチ

理事長の発表原稿


アジア太平洋障害者の十年中間評価ハイレベル政府会合
サイドイベント「障害者の自助団体とその家族や親の会」

皆さん、こんにちは。門川紳一郎です。私は盲ろう者です。本日、ここで皆さんと私の経験を共有できることを光栄に思います。(冒頭の挨拶はアメリカ手話にて)

本来ならば、世界盲ろう者連盟、アジア地域代表の福島智氏がここに出席し、皆さんにご報告申し上げるところなのですが、あいにく体調が悪いために、ここに来ることができません。それで、私、門川が福島の代理としてご報告させていただきたいと思います。世界盲ろう者連盟は2001年、ニュージーランドのオークランドにおいて発足しました。世界盲ろう者連盟、WFDb、bは小文字になっています。世界盲人連合(WBU)や、先ほどの世界ろう者連盟にかなりの遅れをとりながらも、21世紀に入って、21世紀の幕開けとともに、世界中の盲ろう者の権利擁護の運動団体として、ようやく誕生しました。 そして、この設立総会において、スウェーデンのスティッグ・オールソン氏を会長とする初代執行部の下で、日本の福島氏がアジア地域代表に選ばれました。2005年、フィンランドのタンペレで開催された、第2回連盟の総会においても、福島氏はアジア地域代表に再選されました。

ところで、盲ろう者とは目と耳の両方に同時に障害を併せ持つ人のことで、アメリカのヘレン・ケラーはよく知られた盲ろう者ですね。また、昨年、12月、国連で採択された障害者の権利条約の第24条には盲ろうという単語、deafblindという一つの単語が採用されました。さきほどのdeafblindのbが小文字だったこと、これが関係しています。これまでハイフン、スラッシュやスペースなどで区切られていた、いろいろな形で使われていた盲ろう者という言葉ですね、ハイフンもスラッシュもスペースも取れて、一つのdeafblindとして統一されたという画期的な出来事でもあります。これには2代目の会長、レックス・グランディア氏の条約への熱心な取り組みが大きく影響しています。

ところで、日本はアジア地域代表として連盟の仕事をしなければいけません。ところが、アジア地域の盲ろうの情報はほとんどないに等しく、情報収集の面でも大変苦労しています。

また、日本国内においても、盲ろう者の全国的なレベルでの当事者運動団体、つまり先ほどのろうあ連盟のような団体ですが、これは昨年の8月にようやく発足したばかりです。この団体は全国盲ろう者団体連絡協議会と言いまして、福島氏が顧問を務めています。

そのような中、様々な偶然が重なって、お隣の国、韓国で盲ろうの青年が自立と社会参加に向けて頑張っているという情報が飛び込んで来ました。情報を入手したのは、福島氏の下で学んでいる韓国の学生で、この学生を通して、韓国の盲ろう者とやり取りをした結果、昨年の8月、日本の全国盲ろう者大会に招待することになりました。

そして、この盲ろう者、ジョ・ヨンチャンさん、今年3月に韓国で初めて盲ろうの大学生となりました。また、ジョさんの友人で別の盲ろう者、キム・ゴンヒョンさんも放送通信大学の学生として認められました。この2人の盲ろう者が中心となって、今年、3月16日に、韓国初の盲ろう者支援団体、盲ろう者の自立&支援会が発足。日本から福島氏を中心に私も含めて、数名のメンバーでお祝いにかけつけることができました。また、この8月に日本で開催された全国盲ろう者大会に、韓国からも盲ろう者2人を含む8名の参加がありました。

最後に少し盲ろう者のコミュニケーション方法、特に日本でよく使われている方法をいくつか紹介してしめたいと思います。まず、手書き文字、ちょっとやってみます。(手書き文字のデモンストレーション)これは誰とでも使える、日本語でも英語でも何語でも使える方法です。次に触手話。手話を手で触れます。両手でも片手でもOKです。(触手話のデモンストレーション)次に指点字。私が今、使っている方法です。(指点字のデモンストレーション)finger brailleと使っています。他にも盲ろう者のニーズに合わせて、いろいろな方法があります。時間がないようですので、このくらいにします。ありがとうございます。(韓国政府から会場に対し、門川理事長にスタンディング・オーベイションの呼びかけがある。)


(司会者からアジア地域での課題について問われ)

課題を大きく3つぐらい言いたいと思います。

盲ろうという障害を独自の特性をふまえ独立した障害種別として、法的に認めてほしいということです。具体的な例を一つあげるとすれば、例えば、パラリンピックがあります。ここには視覚障害者の部門、聴覚障害者の部門、その他の部門がありますが、盲ろうの部門がありません。もう一つ例を挙げると、盲ろうという障害の特徴はゆっくりゆっくり時間が進んでいくという特徴があります。情報が入ってくるのも遅いし、コミュニケーションにも時間がかかります。ですから、障害者の権利条約に関していえば、ここには盲ろう者からの意見は十分に含まれていないという事実があります。その一つの例として、第2条のコミュニケーションの定義の中にいろいろなコミュニケーションが含まれていますが、盲ろう者独自のコミュニケーションの方法が一つも入っていないことも挙げられます。かろうじて、触覚コミュニケーションという言葉が入っていますが、これは幅が広いので、盲ろう者に特化したコミュニケーションの方法ではないのです。

次に2つ目の課題として、盲ろう者が利用できるサービスをもっと拡充してほしいということがあります。例えば、この会場において、盲ろう者のための情報保障が、今回ここではほとんどなされていない。例えば、点字の資料が非常に少ない。情報保障が非常に少ないということなどがあります。通訳介助者の不足、これは盲ろう者にとってはすごく深刻な問題で、今後、通訳介助者の人材を増やしていかないといけないし、通訳介助者を育てていかないといけないと考えています。

次に3つ目の課題として、盲ろう者の存在をもっと広く社会的にも国際的にも知ってほしい。まだまだ知らない人たちが多いから知ってほしいということです。2013年には日本で世界盲ろう者大会を開催する予定でいます。これに韓国と日本での相互の交流がきっかけとなって、アジア各地域での盲ろう者ネットワークが一日でも早く実現する日を待ち望んでいるところです。韓国と日本との相互交流が広がっていけば、いつか近い将来アジア盲ろう者ネットワークが誕生するのも夢ではありません。そのためにはアジア地域代表である日本の果たす役割は大きい。これをきっかけに多くの支援者と共にアジア地域での活動に励んでいきたいと思います。

皆さんのご支援とご協力をよろしくお願いします。ありがとうございます。